2025-10-29
内閣府は、10月3日に「AI法 全面施行 次なるフェーズへ」と題し、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が9月1日に全面施行とされたと内閣府ホームページで公表した。この法律は、2025年6月4日に公布、一部施行となっていたが、9月1日にAI戦略本部の設置に係る規定等も含めて、全面施行となった。
この法律は、AI(人工知能)に特化した日本で始めての法律であり、世界的にもEU(欧州連合)の「AI規制法」に続く大きな動きと言える。内閣府によるAI法の概要によると「日本のAI開発・活用は遅れている」、「多くの国民がAIに対して不安」という現状があることを踏まえ「イノベーションを促進しつつ、リスクに対応するため、既往の刑法や個別の業法等に加え、新たな法律が必要」と判断されたことにより成立したという背景がある。
先にEUにおいて成立した世界で初のAI規制法は、EU基本権憲章に基づき、人間の自由や平等といった基本的人権を担保し、実現することがEUの役割であるという考え方に基づいて、包括的かつ精緻にAIを規制するものとなっている。
一番の特徴としてはAIシステムを「容認できないリスク」、「高リスク」、「限定的リスク」、「最小のリスク」と4段階に分類し、それぞれに規制の強度が設定されており、特にリスクの高いAIシステムに分類されたものについては、厳しい義務を課すことや特定のAIの使用を禁止するなどリスクベースによるアプローチによりAIの使用を規制していることである。
このようにAIシステムの規制を行うことで、基本的権利、安全性、倫理原則を保護し、信頼できるAIの開発とイノベーションを促進するという内容となっている。
一方、日本のAI法は、国民生活の向上、国民経済の発展を目的として、基本理念については「経済社会及び安全保障上重要」と位置付けし、研究開発力の保持、国際競争力の向上が重要として、「基礎研究から活用まで総合的・計画的に推進」することや「国際協力において主導的役割」を果たすほか、「適正な研究開発・活用のため透明性の確保等」も必要とするなどイノベーション促進とリスク対応を両立し、世界のモデルとなる制度を構築することとしている。
また、研究開発の推進、施設等の整備・共用の促進、人材確保、情報収集、事業者への指導・助言・情報提供、権利侵害への対応など基本的な施策を実施するため、AI基本計画の策定や政府のAI戦略本部の設置なども規定している。
EUの規制法のように違反した場合の制裁金のような罰則等については規定されていないが、事業者は国等の施策に協力しなければならないと責務について定めており、全体的にみると政府による基本計画、AI戦略本部の設置など、AIの研究開発と活用推進を行うための基本法的な性質を持った法律となっている。
(参考)AI法 全面施行 次なるフェーズへ

