人工衛星打上げ輸送サービスに係る消費税の取扱いについて

東京国税局は11月10日、「人工衛星打上げ輸送サービスに係る消費税の取扱いについて」(事前照会に係る文書回答)を公表した。
 
照会者(以下「A社」)が、照会した内容は次のとおりである。
 
A社は、人工衛星を所有する顧客から発注を受け、ロケットによる人工衛星打上げ輸送サービス(以下「本件サービス」)を提供する予定である。
 
本件サービスは、人工衛星の打上げに必要なロケットの準備から顧客が所有する人工衛星を国内の射場(人工衛星の打上げ用ロケットを発射する機能を有する施設)より宇宙空間における所定の軌道に投入するまでの各業務を実施するものである。
 
この場合、A社が顧客から対価を得て行う本件サービスは、国内において行われる課税資産の譲渡等に該当するとともに、輸出免税が適用されるかについて東京国税局に事前照会した。
 
消費税法上、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、国内及び国内以外の地域にわたって行われる貨物の輸送については輸出免税が適用される(消費税法7条1項三号、消費税法基本通達5-7-13)。
 
本件サービスにおけるA社と顧客との契約は、ロケットの打上げ作業の実施自体ではなく「人工衛星の宇宙空間への輸送業務(所定の軌道への投入)」を目的に合意しており、本件サービスの役務提供の完了時点は「人工衛星を宇宙空間の所定の軌道に投入した時点」としている。また、再度ロケットが打上げ可能な場合は打上げ失敗とされず、改めてロケットを打ち上げることとされていることから、本件サービスは、「貨物の輸送」に該当すると判断している。
 
また、消費税法における「国内」とは、同法の施行地をいうところ(消費税法第2条第1項1号)、同法における「国内」とは日本の領空及び領海を含む領土全域を指し、日本の主権が及ぶ地域を指すものと考えられる。
 
一方、宇宙空間は、国連総会で採択された「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」(以下「宇宙条約」)において宇宙空間は主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない(宇宙条約第2条)ことが定められている。
 
このことから、宇宙空間は国家の主権が及ばないことから、消費税法上における「国内」に該当せず、「国内以外の地域」に該当する。
 
また、本件サービスは国内の射場を出発地としていることから、「国内において行う課税資産の譲渡等」に該当し、国内の射場を出発地とし国内以外の地域(宇宙空間)を到着地とする人工衛星の輸送であることから「国内及び国内以外の地域にわたって行われる貨物の輸送」に該当するものとして、A社は、国内において行う課税資産の譲渡等に該当するとともに輸出免税の適用があるとの考えを示し、事前照会を行った。
 
これについて東京国税局は、「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」とA社に回答している。
 
(参考)人工衛星打上げ輸送サービスに係る消費税の取扱いについて

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/shohi/251017/index.htm