2025-12-15
国税庁は、11月11日に令和6事務年度の「相互協議の状況」を公表した。
相互協議とは、移転価格課税等などによる国際的な二重課税について、納税者の申立てを国税庁が受けた場合に租税条約の規定に基づき、外国税務当局との間で協議を行う手続きである。
また、納税者の予見可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、納税者が申し出た独立起業間価格の算定方法などについて税務当局が確認を行う事前確認に係る相互協議の手続きも実施している。
令和6事務年度(令和6年7月1日~令和7年6月30日)における相互協議事案の発生件数は280件(前事務年度比32%増加)となっており、内訳は、事前確認に係るものは194件(構成比69%)、移転価格課税その他に係るものは86件(同31%)と事前確認に係るものの割合が多かった。
処理件数については、242件(前事務年度比11%増加)となっており、内訳は、事前確認に係るものは194件(構成比80%)、移転価格課税その他に係るものは48件(同20%)であった。
処理事案1件当たりに要した平均処理期間は、39.6か月(令和5事務年度:31.8か月)となっており、内訳は、事前確認に係るものは42.4か月(令和5事務年度:35.8か月)、移転価格課税その他に係るものは28.5か月(令和5事務年度:21.5か月)であり、いずれも前事務年度より処理期間が長くなっている。
繰越件数は、773件数(令和5事務年度:735件)であり、内訳は、事前確認に係るものが595件(同:595件)、移転価格課税その他に係るものが178件(同:140件)となっている。
繰越件数が増加したことについて国税庁は、令和6事務年度の発生件数が処理件数を上回ったためとしている。
令和6事務年度の繰越事案の相手国・地域は、アジア・大洋州で426件、米州で211件、欧州・アフリカ136件の順となっており、アジア・大洋州が最も多い。
国別では米国(25%)、次にインド(15%)、中国(13%)、韓国(12%)、ドイツ(5%)の順となっている。
OECD非加盟国・地域との相互協議事案について、令和6事務年度の発生件数は112件、処理件数は104件、令和6事務年度末の繰越件数は334件であり、この件数は、令和6事務年度末の相互協議事案の繰越件数773件の約43%に当たる。
処理事案1件に要した平均処理期間は、49.0か月となっており、そのうち事前確認に係るものは51.8か月、移転価格課税に係るものは36.3か月となっており、特にOECD非加盟国・地域との相互協議事案の処理は、相手国の税務当局と連携が取りにくいことから長期化の傾向にある。
事前確認は、移転価格課税への対策として有効な手段と考えられるが、その処理には時間を要することから事前確認を行う企業は、長期的な視点での計画が必要である。
(参考)令和6事務年度の「相互協議の状況」について
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sogo_kyogi/sogo_kyogi.pdf

