2025-05-16
中小企業庁は4月25日、2025年度版の「中小企業白書」及び「小規模企業白書」を公表した。
今回の白書では、中小企業・小規模事業者(以下「中小企業等」という。)が課題を乗り越え、成長・持続的発展を遂げるに当たって重要となる、経営者の「経営力」を中心に分析を行っており、ポイントは以下のとおりである。
1 中小企業等の動向
円安・物価高の継続や、30年ぶりの金利上昇は、輸出より輸入比率が高く、借入金依存度も高い中小企業等にとって、利益下押しのリスクとなり得る。
2024年の春季労使交渉では、約30年ぶりの賃上げ率を達成も、大企業との差は拡大し、中小企業の労働分配率は既に8割に近く、更なる賃上げ余力も厳しい状況にある。
人手不足は深刻な状況にあり、業績改善なき賃上げも増え、コストカット戦略は限界を迎えており、営業利益向上による賃上げ余力の創出が必要である。積極的な設備投資・デジタル化と適切な価格設定・価格転嫁の推進により、労働生産性を高めていくことが重要である。
倒産・休廃業は足下で増加し、後継者不在率は減少傾向にあるが、経営者年齢は依然高い水準で推移しており、事業承継に向けた取組が必要である。
2 中小企業等の成長・持続的発展に向けて有効な取組
こうした課題を乗り越え、成長・発展を遂げるに当たっては、経営者が、自らが置かれている状況と方向性を把握し、的確な対策を打つ力としての「経営力」が重要であり、3つの観点から分析を行っている。
(1)個人特性面:異業種・広域ネットワークで他の経営者と交流し、学び直しに取り組む経営者の成長意欲の高さは業績向上に寄与する。
(2)戦略策定面:経営計画策定・実行、差別化や市場環境を意識した適切な価格設定を行う戦略的経営は業績向上や賃上げ・投資を促進する。
(3)組織人材面:経営理念、業績・経営情報の共有を重視するオープンな経営は業績向上に寄与する。賃上げ、社内コミュニケーション円滑化、働き方・職場環境改善など、従業員を大切にする人材経営は従業員の確保・維持に貢献する。
その上で、中小企業においては、売上高規模ごとに異なる「成長の壁」の打破が必要となり、成長の加速段階では、経営者にないスキルを持つ補完型人材の確保や、経営者の職務権限分散による一人経営体制の克服が重要であり、小規模事業者においては、事業規模・商圏が限られる中、差別化による独自の強みの創出が重要であるとしている。
(参考)「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書」を公表
https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250425001/20250425001.html