2025-07-01
国税庁は6月18日、「令和6年度 査察の概要」を公表した。
査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、 適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としており、経済取引の広域化、デジタル化、国際化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施している。
令和6年度については、98件を検察庁に告発し、告発した査察事案に係る脱税総額は82億円であり、1件当たりの脱税額は84百万円で告発率は65.3%となっている。
令和6年度においては、査察制度の目的に鑑み、特に以下の事案について重点事案として積極的に取り組んでいる。
1 消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ取り組んだ結果、29件を告発している。また、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案については、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、17件を告発している。
2 無申告事案
納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告事案については13件を告発しており、そのうち、不正行為はないものの、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告ほ脱事案は8件となっている。
3 国際事案
経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を越える取引が恒常的に行われ、資産の保有、運用の形態も複雑・多様化しているところ、国際取引を利用した脱税への対応が求められており、このような状況の中、海外事業における収入を除外していた事案や海外に不正資金を隠していた事案などに取り組み、20件を告発している。また、国際事案では租税条約等に基づく外国税務当局等との情報交換制度を活用している。
4 社会的波及効果の高い事案
時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に取り組み、事案の概要として、人気タレントが所属する芸能事務所が架空の広告宣伝費や外注費を計上する方法により、法人税及び消費税を免れていた事案などが挙げられている。
査察事件の一審判決の状況について、令和6年度中の一審判決は99件であり、全てに有罪判決が言い渡されている。そのうち13人に実刑判決が出され、消費税法違反を含むものは7人となっており、実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独で懲役2年6月、他の犯罪と併合されたもので懲役9年となっている。
(参考)「令和6年度 査察の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sasatsu/r06_sasatsu.pdf