2025-12-05
法務省は、11月28日に相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計を公表した。
今回の統計は、令和7年10月31日現在における速報値となっており、今後、運用状況に合わせて順次更新するとしている。
相続土地国庫帰属制度とは、所有不明の土地の発生を予防する方策の一つとして創設された制度で、相続又は遺贈(遺言により特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)により土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度であり、令和5年4月27日から開始している。
この制度が創設された背景としては、土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える者が増加していることや相続を契機として、望まずに土地を取得した所有者の負担感が増し、管理の不全化を招いていることなどが挙げられている。
統計によると申請件数は、総件数が4,556件となっており、地目別には田・畑が1,755件(全体比約38%)、宅地が1,588件(同約35%)、山林が715件(同約16%)、その他が498件(同約11%)と田・畑と宅地で全体の約73%を占めている。
国庫への帰属件数は総数が2,145件で種目別では、宅地が784件、農地用697件、森林132件、その他532件となっている。
却下件数は74件であり、主な却下の理由(1件につき複数理由あり)をみると「法第3条第1項及び施行規則第3条各号に定める添付書類の提出がなかった。」が35件、「現に通路の用に供されている土地に該当した。」が18件、「境界が明らかでない土地に該当した。」が18件などとなっており、添付書類の提出がなかったことによる却下が最も多かった。
不承認件数は74件であり、不承認の主な理由(1件につき複数理由あり)については「土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地に該当した。」が35件と最も多く、「国による追加の整備が必要な森林に該当した。」が32件、「災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するための措置が必要な土地に該当した。」が10件などとなっている。
取下げ件数は801件となっており、主な理由として「自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した。」、「隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった。」、「農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった。」、「審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した。」などがあった。
相続土地国庫帰属制度を利用するための要件は、非常に厳しく、例えば、建物がある土地、危険な崖がある土地、管理の妨げにある工作物、車両、樹木などがある土地、境界が明らかでない土地などは帰属制度の対象外とされていることや審査のための手数料や負担金も必要であることから、制度を利用したい方は、事前に法務省のホームページで要件・手続きなどを確認することをおすすめする。
(参考)相続土地国庫帰属制度の統計
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html
(参考)相続土地国庫帰属制度について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

