2025-09-08
厚生労働省は、8月8日、全国の労働基準監督署等が、令和6年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導(立入調査)や送検等の状況について取りまとめ、公表した。
令和6年の監督指導・送検の概要は下記のとおりである。
・監督指導を実施した事業場は4,328事業場であり、このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、3,532事業場(81.6%)であった。また、改善基準告示(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号))違反が認められたのは、2,360事業場(54.5%)であった。
・主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(42.9%)、(2)割増賃金の支払(22.6%)、(3)労働時間の状況の把握(7.0%)となっていた。
・主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(39.4%)、(2)休息期間(28.4%)、(3)総拘束時間(27.6%)であった。
また、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは59件となっており、業種別では、トラックが42件、バス、ハイヤー・タクシーがそれぞれ5件、その他が7件となっていた。
自動車運転者の「改善基準告示」等の主な改正内容(令和6年4月1日適用)は、「1日の休息期間」「1日の拘束時間」「年・月の拘束時間」「その他」について、改正前よりその時間を長くすることとされており、「1日の休息期間」については、トラック、タクシー、バスともに改正後は9時間を下限とし、継続11時間以上とするよう努めること(改正前は継続8時間以上)としている。また、「1日の拘束時間」については、トラック、タクシー、バスともに改正後は原則13時間以下、最大15時間(改正前は最大16時間)としている。
物流は重要な社会インフラであり、国民生活や経済活動になくてはならないものであるが、トラックドライバーの拘束時間の内訳のうち荷役と荷待の合計は3時間を超えている(平均拘束時間12時間26分)。
このままでは国民生活や経済活動を支える社会インフラの維持が困難になり、担い手不足の深刻化や荷待ち時間の非効率の発生などにより、危機的状況との指摘もでている。何も対策をしなければ、2030年には34%の輸送力が不足するかもしれないとされている。
厚生労働省では、「発着荷主等に対する要請時に配布するリーフレット」を作成し、「発荷主・着荷主・元請運送事業者の皆さまへのお願い」として、1.長時間の恒常的な荷待ちの改善、荷役作業の効率化、2.改善基準告示を発注担当者へ周知を示し、また、「標準的運賃」(2024年3月に8%上昇、「標準運送約款」は附帯作業の料金等、契約条件の明確化を行う形で改正)と「改正物流法」(令和7年度以降、企業規模を問わず、すべての荷主(発荷主・着荷主)と物流事業者に対し、荷待ち・荷役時間の削減等のために取り組むベき措置について努力義務が新たに課せられ、トラック事業者の取引に対しては、運送契約締結時の書面交付や実運送体制管理簿の作成等の義務が新たに課せられる)への理解と協力を求めている。
(参考)労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導、送検等の状況を公表します