2025-07-28
東京商工会議所は、7月10日事業承継対策委員会における議論をふまえ、「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」(以下「意見書」という)をとりまとめ、公表した。
「意見書」では、下記のような現状と課題を指摘している。
・中小企業の経営者年齢の分布は徐々に幅広い年齢に分散されてきている一方、75 歳以上の経営者の割合は過去最高となっている。
・中小企業における後継者不在率は緩やかに減少を続けているものの、依然として後継者不在企業は約5割存在している。
・事業承継税制特例措置は、中小企業の円滑な事業承継に大きく寄与しているが、特例承継計画の提出期限が 2026年3月末までとなっており、以降は新規に特例措置を活用することができず、このままでは中小企業の事業承継が停滞し、地域の活力低下を招くおそれがある。
・中小企業・小規模事業者の事業承継は、親族内承継が中心ではあるものの、近年は従業員承継や、第三者承継(M&A)も増加傾向にあり、承継先の多様化に伴い、必要な支援も複雑化しており、個別企業の課題や状況に応じた支援が一層求められているが、M&Aについては、一部の不適切な買い手やM&A専門業者によるトラブルが問題となっており、中小企業・小規模事業者の間でM&Aに対する警戒感が高まっている。
「意見書」では、このような現状と課題に対し、国や東京都に対して、1.事業承継の決断に向けた強力な後押し、2.事業承継税制の特例措置の恒久化と活用促進、3.自社の役員・従業員に承継する際の支援策の体系化・拡充、4.後継者不在企業の第三者承継の推進、5.総合的な支援体制の維持・強化を要望している。
具体的な重点要望項目の概要は、下記のとおり。
1.事業承継の決断に向けた強力な後押し
・経営者や関係者、支援機関に対する、事業承継の決断を後回しにすることによるリスクの周知
・事業承継計画の早期作成の推進
2.事業承継税制の特例措置の恒久化と活用促進
・事業承継税制の特例措置の恒久化(一般措置の特例措置並みの拡充)
3.自社の役員・従業員に承継する際の支援策の体系化・拡充
・従業員承継における多様な手法と事例、注意点に関する体系的な情報発信
・従業員承継に特化した公的な事業承継支援ファンドの創設
4.後継者不在企業の第三者承継の推進
・悪質な買い手やM&A専門業者に対する規制強化の検討
・経営者に対するM&Aの正しい理解の促進
・「事業承継・引継ぎ支援センター」における「トレーニー研修制度」の創設
・同業者間でのM&Aを推進するため業界団体・組合におけるマッチング支援体制構築の後押し
・「事業承継・引継ぎ支援センター」における、譲受側に対する外部専門家支援の予算確保
5.総合的な支援体制の維持・強化
・地域持続化支援事業(拠点事業)「ビジネスサポートデスク」の安定的な予算確保・利用促進
(参考)「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」について
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1206411