2016年度の滞納整理の訴訟提起は158件〜国税庁

国税庁が先日公表した2016年度租税滞納状況によると、新規発生滞納の抑制及び滞納整理の促進により、今年3月末時点の滞納残高は18年連続で減少した。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

原告訴訟に関しては、2016年度は158件(前年度156件)の訴訟を提起した。訴訟の内訳は、「差押債権取立」18件、「供託金取立等」6件、「その他(債権届出など)」129件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が5件となった。そして、係属事件を含め154件が終結し、国側勝訴は33件、取下げが5件、その他が116件で、国側敗訴は0件となっており、滞納は順調に整理されている。

また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処している。同免脱罪の罰則は、3年以下の懲役か250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科とされている。2016年度は、4件(7人員)を告発、うち5人が起訴されて、裁判で4人に懲役10ヵ月から2年、執行猶予3年の刑が言い渡されている(1人員は継続中)。

悪質な滞納事例をみると、ブロック工事業を営む滞納者Aは、税務調査で売上除外を指摘され、申告所得税等の修正申告を行った。しかし、Aは、修正申告時点では自宅不動産以外には財産がなく、他方で、多数の債権者に財産の価額を上回る債務を負っていた。そのため、滞納国税約500万円を一括納付できず、自宅不動産の担保提供を申し出ていたが、不動産の登記簿を確認したところ、登記簿名義を長女に移していたことが判明した。

さらに、Aは長女から返済期限のない借入をしており、国税を納付できなくなることを知りながら、借入の返済として自宅不動産を長女に譲り渡したことを把握。多数の債権者のうち、あえて長女に抜け駆け的にした返済は、他の債権者を害する行為と判断し、長女を被告として詐害行為取消訴訟を提起した。その結果、勝訴判決を受けた税務署長は、自宅不動産をA名義に戻した上で、差押え(約300万円)を行い、国税の徴収を確保している。

なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。