2025-12-23
経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)は、12月8日に意見書「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」を公表した。
コーポレートガバナンス(企業統治)とは、企業経営を管理監督する仕組みのことであり、不正や独善を防ぎ、透明で公正な経営を通じて企業価値を向上させることを目的としている。
わが国でも政府が「「日本再興戦略」改訂2014」で成長戦略のひとつとしてコーポレートガバナンスの強化を位置付け、2015年6月に上場企業の企業統治におけるガイドラインとすべき原則・指針「コーポレートガバナンス・コード」(以下「ガバナンス・コード」)の適用が開始された。
意見書ではガバナンス・コードの制定から10年を経て、「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」を実現するコーポレートガバナンスの本質を踏まえ、企業と株主・投資家のそれぞれにおける課題・果たすべき役割について、経団連の考え方を示し、経営者のマインドセット(物事の捉え方、判断基準)の変革を促すとともに、政府への提言を行っている。
コーポレートガバナンス改革を踏まえた今後の課題及び提言は以下のとおりである。
1 企業(事業会社)の課題
企業は短期的な経営指標の改善、株主への還元拡大や目先の資本効率など目先に捉われており、研究開発、設備投資、新規事業など中長期的な価値創造への投資が伸び悩んでいる。
経営者は、自社のパーパス(目的)と長期的な成長を経済的価値・社会的価値の両面から価値創造ストーリーとして明示し、積極的に成長への投資に取り組むべきである。
また、ガバナンス・コードは企業の創意工夫による自律的経営を支える枠組みであり、企業行動の制限や特定の政策目的の実現手段として用いるべきでないとしている。
2 株主・投資家の課題
企業と株主・投資家が「共創者」としての役割を果たすことが重要であり、株主・投資家が取り組むべきことについて主体別に分け、アセットオーナー・アセットマネージャーは中長期の企業価値向上のための対話(短期的な株価変動に左右されない対話等)などの定着、議決権行使助言会社は実質的な企業理解に基づく助言などの実施、ESG評価機関・データ提供機関は分析結果等の透明性や説明責任の明確化などを検討すべきである。
3 株主総会や開示、株主権等の課題
企業と株主・投資家の関係が多様化し、株主総会の運営、開示内容・手法、株主権限などについて抜本的な見直しが必要となる段階にある。
特に、近年、株主提案の件数が著しく増加し、対応する企業の負担も増大しており、企業の規模等を問わず議決権を300個有していれば株主提案権を有するという現行制度は廃止すべきである。
わが国のコーポレートガバナンス改革は途上にあり、実質的な経営改善へと結びつけていくための環境整備が今後の課題である。
改革の目的は、健全で持続的な経済成長を支える企業行動を定着させることである。
そのため、制度横断的な見直し、企業負担の軽減、規則の見直しなど企業が自律的かつ柔軟に成長を果たせるような制度設計が必要であり、企業・投資家・制度がそれぞれの役割を果たし、着実に前進を続けていくことが期待されていると意見書は締めくくっている。
(参考)持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方
https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/083.html

