日銀 地域経済報告「地域企業の設備投資の動向と最近の変化」を公表

日本銀行は12月9日、地域経済報告(さくらレポート)「地域企業の設備投資の動向と最近の変化」を公表した。
 
設備投資は企業収益が高水準を維持するもとで緩やかな増加傾向にあり、輸出ウェイトが高い企業を中心に各国の通商政策により企業収益が相応に下押しされており、企業の設備投資スタンスに影響を及ぼす展開も想定される。同行では地域企業に対して、最近の設備投資の動向などについてヒアリング調査を実施し、結果は以下のとおりである。
 
地域企業の最近の設備投資の動向として、多くの地域企業で、様々な下押しのリスク・制約がありつつも、先行き経営環境が変化し続けることを見据え、中長期的な視点に立って、設備投資を着実に進めている姿が確認され、具体的な投資内容としては、「能力増強・研究開発投資」、「高付加価値化投資」、「ソフトウェア・省力化投資」が多かった。
 
一方、設備投資を下押しするリスク・制約を指摘する声として、「各国の通商政策の影響による不確実性や企業収益の悪化」、「店舗・設備の稼働人材などの不足」などがある。
 
設備投資を巡る最近の特徴的な変化点としては、次の3点が挙げられている。
 
第1に、労働力の不足が量・質の両面で深刻化するもとでも、事業を発展させていくために、AI等のデジタル技術の活用を含めた省人化投資が拡大している。その背景として、人手不足の解消が中長期的にも見込みにくいとの見方が広がっていることなどがある。
 
第2に、事業活動に要する様々なコストが上昇し続けるもとでも、一定の収益を確保できることを目指した投資が拡大している。効率性・収益性を改善させる合理化投資や生産性向上投資などもみられた。その背景として、事業コストが先行きも広範かつ持続的に上昇するとの見方が広がっていることなどがある。
 
第3に、投資の実行可否を決める判断にも変化がうかがわれる。建設費など投資費用の上昇が先行きも続くことを見越し、投資判断を前傾化する動きや、投資費用等が上昇しても、差別化・高付加価値化などを通じた値上げによる将来の収益確保や需要拡大を見据えて、投資判断を積極化する動きがみられた。こうした動きは、長年続いた賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が変化し、前向きな企業の投資行動が増えていることを示唆している。
 
(参考)「地域経済報告(さくらレポート)地域企業の設備投資の動向と最近の変化」

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rerb251209.htm