所有者不明土地、2021年度175団体が現使用者に課税

所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題については、2020年度税制改正において、相続人等に対し、「現に所有している者」として、その氏名、住所等を申告させることができる制度が創設され、また、地方団体が調査を尽くしても所有者が一人も明らかとならない資産について、その資産を使用収益している者がいる場合、あらかじめ使用者に通知を行った上で、使用者を所有者とみなして課税することができることとされた。

こうした税制改正を踏まえ、資産評価システム研究センターは、所有者不明土地への対応状況について、地方団体へフォローアップ調査を行うとともに、2021年度課税において使用者を所有者とみなして固定資産税を課した実績のある地方団体から、対応状況等について報告を受け、公表した。フォローアップ調査は、総務省自治税務局固定資産税課から、都道府県を通じて、東京都及び全市町村(1719団体)を対象に行い、全団体から回答を得た。

その調査結果によると、現に所有している者(相続人等)に氏名等を申告させる制度ついては、「条例へ規定の整備を行っている」団体は1542団体、「整備に向けて調整中」の団体は96団体、「整備する予定がない」団体は81団体だった。既に規定を整備している1542団体については、2020年度における申告件数1000件以上の団体が42団体ある一方、同0件の団体が836団体となっている。

使用者を所有者とみなす制度では、2021年度課税において適用事例ありとした団体が175団体、2022年度課税に向けて調査中であるとした団体が519団体あった。2021年度課税において適用事例ありとした175団体中、160団体とほとんどの団体が適用件数1~4件だったが、同20件超とした団体も3団体あった。主な適用事例としては、住居・店舗として使用されている土地・家屋、駐車場として営業されている土地等の回答があった。

なお、使用者を所有者とみなす制度の運用上の課題としては、住宅以外の場合、住民記録及び電気・ガス・水道の利用状況等の客観的な資料が得にくく、使用者を所有者としてみなす認定が困難なことや、一筆の土地を複数名で使用している場合や、複数世帯が居住している家屋の場合、誰を所有者とみなすか判断が難しいことなど、使用者の特定、所有者とみなすための証拠収集が難しいとの報告があった。

また、相続放棄した者が、土地・家屋の維持・管理のためその家屋に居住する場合、使用者課税の対象となるかわからないことや、現在管理している者が「税金がかかるならやめる」と言う場合、管理者の居ない荒地や空き家となる可能性があること、人は住んでいないが仏壇等がある家屋のケースで、管理する人が他にいないので親切心で管理している親族がいる場合、使用収益といえるのか、判断が難しいこと、などが報告されている。

「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究」は↓
https://www.recpas.or.jp/new/jigyo/report_web/pdf/r3_all/r3_report_arikata.pdf