税務上の書面、押印、対面原則の見直しの議論の論点

内閣府では10月21日、納税環境整備に関する専門家会合が開かれ、税務上の書面、押印、対面原則の見直しについて議論された。この見直しについては、既に7月17日に閣議決定された規制改革実施計画において、「各府省は、原則として全ての見直し対象手続きについて、恒久的な制度的対応として、年内に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」とされている。

財務省が専門家会合に提出した資料によると、国税関係手続きの現行制度では、税務署長に提出される税務書類(申告書等)には、提出者等が押印しなければならない(国税通則法)、また、税理士等が税務代理等をする場合には、税理士等は押印しなければならない(税理士法)とされている。法令上、大半の手続きにおいては、印鑑の種類についての限定がない一方で、一部の手続きでは実印による押印及び印鑑証明書の添付が求められている。

例えば、土地を担保として延納や猶予の申請をする場合、土地所有者による抵当権設定登記承諾書(押印含む)・印鑑証明書の添付が、第三者の保証人を立てる場合は、当該保証人の保証書(押印含む)・印鑑証明書が必要だ。また、配偶者に対する相続税額の軽減の特例を申請する場合、遺産分割協議書に記載された合意内容の真正性を確保するため、遺産分割協議書(全ての共同相続人等の押印含む)・印鑑証明書の添付が必要となっている。

財務省は、押印原則見直しの論点として、国税関係手続きにおける押印義務は、原則として廃止すべき、実印による押印及び印鑑証明書の添付を求めているような一定の手続きについては、政府全体の方向性を踏まえ、その取扱いを検討すべき、実務上「署名又は押印」を求めている手続きであって、現状において認印を許容しているものについては、押印と併せて署名も不要と整理すべきではないか、との意見を明らかにしている。

また、書面・対面原則については、現行制度上、国税に関する申告や申請をオンラインで行う場合には、申告書等に記載すべき事項を「入力」して送信することが必要だが、申告書等の添付書類については、スキャンしたデータの送信によることもできる。同制度の下、国税に関する申告や申請については、ほとんど(件数ベースで99%)がオンライン(e-Tax)で手続きが可能(入力フォームを提供)となっている。

他方、例えば、臨時に必要となる申告等や、件数が僅少な手続き、第三者を経由して行われる申告等などの諸手続きについては入力フォームが提供されておらず、オンラインで手続きをすることができない状況にある。財務省は、費用対効果の観点を踏まえ、入力フォームが用意されていない手続きについては、スキャンしたデータを送信することによるオンライン手続きを認めてはどうかとの考えを示している。

専門家会合における財務省の説明資料は↓
https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/2noukan3kai1.pdf