事業承継税制の質疑応答事例が5年ぶりに改訂──令和7年度改正も反映

国税庁は、令和7年7月7日、非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例措置(いわゆる事業承継税制)に関する質疑応答事例を約5年ぶりに改訂した。今回の改訂では、令和3年度から7年度にかけての税制改正を反映し、全14問にわたって内容が見直されている。
 
更新された設問では、特例措置(※1)と一般措置(※2)の違いや、手続の流れ、贈与者・受贈者の要件、猶予税額の計算方法などが解説されている。たとえば、問1-2では一般措置と特例措置の相違点が整理され、問1-3や問1-4では納税猶予を受ける際の具体的な申請手順が確認できる。また、複数の贈与者・会社にまたがるケースや、贈与と相続の混在、相続時精算課税との併用など、制度の柔軟な適用をめぐる事例が複数取り上げられている。
 
今回のQ&A改訂に際し、特に重要なのが令和7年度税制改正の内容を反映した問2-8、2-9の改訂である。法人版の特例措置において、従来は「贈与の日まで引き続き3年以上役員であること」が求められていたが、改正により「贈与の直前に役員であればよい」と要件が緩和された。これにより、令和6年末時点で役員に就任していない後継者であっても、贈与直前の就任で制度適用が可能となる。
 
ただし、この緩和は特例措置に限定される点には注意が必要である。一般措置においては、従来通り「贈与日まで3年以上継続して役員であること」が求められており、改正の影響を受けない。制度選択の段階で要件を慎重に比較検討する必要がある。
 
なお、特例措置の適用期限は法人版で令和9年12月31日、個人版で令和10年12月31日までとされており、現時点で延長の方針は示されていない。制度活用を検討する企業においては、改正内容とQ&Aの更新を踏まえ、早期の準備が求められる。
 
 
(参考)非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例措置等に関する質疑応答事例について

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/pdf/0025005-103.pdf