2026-06-17
国税庁は6月4日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第3回を開催し、資料を公表した。
今回は、日本商工会議所、日本税理士会連合会、学識経験者の櫻井久勝氏から提出された資料により構成されており、取引相場のない株式の評価の見直しに向けた意見・提案が行われている。
まず、日本商工会議所は、中小企業の事業承継を重視する立場から意見が行われており、中小企業の事業承継に係る税負担について、現行制度では利益を上げて成長した企業ほど株価が高くなり、後継者の相続税負担が重くなるため、企業の成長意欲を阻害する可能性があると意見している。
また、取引相場のない株式の評価方法に対する考え方について、1.現在の取引相場のない株式の評価方法がわが国の成長を阻害している現実を直視すべき、2.財産評価基本通達が担ってきた実質的な役割を直視した対応が不可欠、3.会計検査院報告については、純資産価額方式の評価を引き下げる方向で対応すべき、4.納税者の視点を重視しつつ、「株式評価」と「税負担」を一体的に議論すべき、としており、事業承継税制の特例措置を拡充・恒久化したうえで、事業承継に悩む全ての中小企業が低コストで簡便に利用できるよう、猶予・免除のあり方や評価減を含め、制度の見直しが不可欠であり、一方的に評価方法のみを議論することは断固反対との意見を行っている。
次に日本税理士会連合会は、税の実務を行う立場から意見を述べており、実務的に困っている点として、1.類似業種比準額と純資産価額の評価の乖離(税務訴訟への波及)、2.評価の算定作業の過度な負担と複雑性、3.類似業種比準価額の在り方、算定に係る問題点、4.課税時期の会社の状況等によって評価方法が変更になること、などを挙げており、見直しの具体案・方向性としては、評価制度と事業承継税制の「一体的改革」が最も重要としている。
評価制度と事業承継は趣旨が異なるが、実務上は不可分である。
評価と政策税制は本来、別々の議論であるが、今回、両者の議論は一体不可分であり、限られた時間のなか、評価と税制を一体的に議論し、早期に全体像を提示する必要があるとの意見を行っている。
櫻井委員からは会計学における企業価値評価の研究状況が示されており、企業価値評価には無形価値がもたらす企業業績の反映が不可欠として、インカム・アプローチの3つのモデル(配当割引モデル、割引キャッシュフローモデル、残余利益モデル)が紹介されており、モデルについて定性的な優劣比較も行われている。
これらのモデルの同等性として仮設例による説明が行われており、必要とする将来期間のデータ(配当、キャッシュフロー、純利益)が正しく予測されている限り、どのモデルでも同じ評価額に到達するとの分析結果を公表している。
第3回会議は、専門家などから幅広く意見を聴く場となっており、国税庁ではこれらの意見を踏まえて制度改正案を検討していくものと考えられる。
(参考)「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第3回)資料
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260604/pdf/03shiryo_kabukaigi.pdf

