ネット取引調査で1件平均1164万円の申告漏れ把握

オンラインショッピングやネット広告などインターネット取引はすっかり定着しており、なかには年間1億円を超す売上があるネット業者も珍しくない。しかし、多額の利益を上げながら、ネット上の売上は国税当局には把握されまいと考え、無申告・過少申告する業者が後を絶たない。ネット取引は、無店舗による事業形態となるため、その把握は困難だが、国税当局は、あらゆる有効な資料情報を収集・分析して適正な課税に努めている。

国税庁によると、今年6月までの1年間(2015事務年度)では、ネット取引を行っている個人事業者などを対象に前年度比8.3%減の2013件を実地調査した結果、同3.8%増の1件当たり平均1164万円の申告漏れ所得金額が把握された。この申告漏れ額は、同時期の実地調査における特別調査・一般調査全体での1件平均941万円の約1.2倍となっている。申告漏れ所得金額の総額は、234億円(前事務年度246億円)にのぼる。

調査件数2013件を取引区分別にみると、ホームページを開設し、消費者から直接受注するオンラインショッピングを行っている「ネット通販」が572件(1件当たり申告漏れ710万円)、「ネットオークション」が450件(同879万円)、「ネットトレード」が369件(同1788万円)、「ネット広告」が253件(同1007万円)、「コンテンツ配信」が27件(同1202万円)、出会い系サイトなど「その他のネット取引」が342件(同1738万円)だった。

調査事例では、従業員の認証IDを借用し、インターネット販売の一部を除外しているものがあった。調査対象者Aは、インターネット取引を利用し、海外から仕入れた商品の販売やネットオークションを行っていることから調査が行われた。取引口座等を確認した結果、従業員名義の預金口座での取引が把握されたため、従業員を追及したところ、インターネット上の認証IDと預金口座はAがすべて管理している把握している事実が分かった。

調査の結果、Aは、事業の帰属を隠ぺいするために、従業員のインターネット上の認証ID及び預金口座を借用し、従業員名義の口座に振り込まれた売上について除外していることを認めた。Aに対しては、所得税4年分の申告漏れ所得金額約2700万円について追徴税額(重加算税を含む)約700万円及び消費税3年分の追徴税額(加算税を含む)約400万円が課されている。