「ビール券」は仕入税額控除できないケースが多い!?

暑い日が続く夏は、ビールのおいしい季節でもある。お中元にビール券を贈る企業も多いと思われるが、消費税法上、ビール券は、商品券やギフト券、旅行券などとともに物品切手等とされ、その譲渡は非課税とされている。消費税の課税時期は、取引の内容に応じて、資産の引渡し時又はサービスの提供時となっており、後日、物品切手等を使って商品を購入したり、サービスの提供を受けたときが課税の時期となる。

したがって、仕入れに含まれる消費税額の控除は、物品切手等を購入したときではなく、後日、その商品券などを使って実際に商品を購入した者が、そのときに行うことになる。つまり、ビール券の発行時は対価性がない取引として不課税であり、譲渡時は、税の性格から課税対象になじまないものとして、商品券やプリペイドカードなどと同様に非課税である。課税となるのは、ビール券をビールと引き換えたときである。

ビール券は、ビールと引き換えることができる「現金」と同じであるから、発行時の対価は預かり金であり、対価性はないことになり、譲渡時も非課税であって、ビールと引き換えて初めて課税対象となる。企業がビール券を購入した場合は、その時点では非課税取引だから、購入費用は仕入税額控除の対象とはならない。社内で仕事の打上げなどのためにビールと引き換えれば仕入税額控除の対象となる。

ただし、企業がビール券を購入する場合は、お得意様や取引先等に中元などで贈答用に使うケースがほとんどだろう。そうなると、贈答を受けたほうでの仕入税額控除が想定できるが、そのためには、贈られたビール券を受入れ処理して益金計上することが必要になる。しかし、実際のところ、ビール券を贈られた企業が益金計上することはほとんどないだろうから、仕入税額控除できないケースが多いことになる。

なお、事業者が自ら使うビール券や商品券などで継続して購入した日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合は、その経理処理が認められることになる。また、事業者が自ら使用するビール券や商品券などを購入した場合の控除する消費税額は、引換えを受けた商品やサービスの対価ではなく、ビール券や商品券などの物品切手等の購入に要した金額をもとに計算することになる。