東京商工会議所 2025年度サービス部会 報告書を公表

東京商工会議所サービス部会は、10月22日、対談や今期の活動をとりまとめた報告書を作成・公表した。
 
 この報告書は、生産性向上がもたらすサービス業の未来についての対談(1章:高付加価値化と人材投資による企業成長とは、2章:企業の人材力を高めて、成長と分配の好循環を作り出すには)とサービス産業の生産性向上(3章:新時代における勝ち筋を探る考察)、サービス部会の今期活動実績(4章)から構成されており、1章、2章の対談の論点は、なぜサービス業の生産性向上が必要かという点について環境的要因と業種的要因から整理している。
 
ここで、環境的要因とは人口減少・労働生産人口の減少による労働力不足、業種的要因とは、サービス業が、事業割合が最も多く、日本経済全体へのインパクト大きいことと製造業等他業種より労働生産性が海外と比べて著しく低いことに整理されている。
 
このような課題を乗り越え、成長していくために必要なことは、サービス産業の課題を小規模事業者が多く、スケールメリットが少ないため、付加価値を上げにくいこと、非正規雇用が多いこと、労働者の流動性が低くDX人材がいないこととし、課題を乗り越えるためには、非正規雇用が多く、正社員との間に存在する壁を認識し、繁閑差の平準化や柔軟な働き方を求めることであるとしている。
 
労働生産性に対する考え方は、労働生産性の分子にあたる「付加価値」を上げることが重要であり、人材、ICT、組織への投資を通じて生産性の高い体制づくりを進めることが企業成長を促し、生産性向上や省人化により浮いた資源でサービスの質を高め、付加価値を上げ、価格に転嫁し、物価と賃金の前向きな循環を生み出すとしている。
 
また、環境的要因である人口減少への対応と労働力の確保、業種的要因を克服し、労働生産性を向上させるためには、人材投資・人的投資、人・企業の評価制度を整備することが必要であるとしている。
 
具体的な対応としては、人口減少については、労働者一人当たりのパワー、付加価値を増やし、労働生産性を向上することが重要であり、労働投入・資本投入に加え、質的要因となる全要素生産性を上げて収益力を強化することが不可欠であるとし、女性・高齢者・外国人の活用や子育て支援、働き方・ライフプランの両面に企業が関わり、支援することで成長と分配の好循環を作り出すとしている。また、労働力の確保については、正規・非正規の雇用の壁を解消し、短時間正社員制度を導入することとしている。
 
人材投資・人的投資については、OFF-JTの重要性やデジタル・DXを導入するだけではなく、使いこなせる人材を育てることが必要であり、分配を掲げて成長する時代であることを認識し、価格転嫁で賃上げの源泉を確保した上で、賃上げを前提とした経営戦略が必要であるとしている。
 
人・企業の評価制度の整備では、正しい評価をすることで、従業員の定着率を上げることができること、企業自体を評価する制度も有効であることが説明され、このような評価制度を整備することが、従業員のモチベーションアップや企業自体の魅力を向上させることにつながるとしている。
 
(参考)2025年度サービス部会 報告書の公表について

https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1207528