ICTを活用した電子納税手続きの簡素化へ本腰

国税庁が先日、ICT(情報通信技術)・AI(人工知能)を活用した約10年後の税務行政のイメージを示したが、その背景には、政府がようやくICTを活用した税務手続きの簡素化に本腰を入れ始めたことがある。政府税制調査会(首相の諮問機関)は6月19日、総会を開き、米国、カナダ、英国、フランス、エストニア、スウェーデン、韓国など、税務手続きのICT化先進7ヵ国を視察してきた委員による調査報告が行われた。

その調査報告によると、電子納税手続きの推進が最も進んでいるエストニアでは、電子申告の利用状況(2013年)が所得税で95%、法人税で99%、付加価値税で99%とかなりの高水準となっている。納税者利便の向上のため、雇用者等から集められた情報を国税当局があらかじめ申告書に記入し、納税者に提供することで納税者の税務申告を支援するサービス(記入済申告書)も導入している。

電子申告割合では、イギリス(98%)、フランス(96%)、韓国(98%)も高水準で、記入済申告書については、スウェーデン、フランス、カナダも導入している。これに対し日本における電子申告利用状況(2015年)は、法人全体で75%、大企業では52%にとどまっており、国税と地方税の電子申告・納税システム(e-Tax、eLTAX)の連携も道半ば。使い勝手の悪さも指摘されているところ。

政府は今後、今回報告された税務手続きITC化先進諸国の例を参考に、大企業の電子申告義務化や、ネット上で納税手続きが完結する電子納税の拡大などについての詳細を検討する一方、手続きの電子化・簡素化等により、事業者の負担感減少に向けた取組みを進める。そのため、(1)電子納税の一層の推進、(2)e-Taxの使い勝手の大幅改善、(3)地方税との情報連携(電子申告での共通入力事務の重複排除等)などが目標となる。

ちなみに、規制改革推進に関する第1次答申(5月23日、規制改革推進会議)では、行政手続コストの削減に向けて、「各府省は、行政手続簡素化の3原則(「行政手続きの電子化の徹底」、「同じ情報は一度だけの原則」、「書式・様式の統一」)を踏まえ、行政手続コストを2020年までに20%削減すること等を内容とする行政手続部会取りまとめに沿って、積極的かつ着実に行政手続コストの削減に向けた取組を進める」との方向性を示している。