経営者の学び直しに関するアンケート調査結果

東京商工会議所は、9月12日、教育・人材育成委員会において、経営者の学び直しに関する実態や課題などを把握するため、「経営者の学び直しに関するアンケート調査」を実施し、ヒアリングを行った4社の事例とともにとりまとめ、公表した。
 
このアンケート調査は、2025年5月13日~6月9日に、創業3年超の東商会員25,000社(回答数:446社(回答率1.8%))に対して、WEBアンケート調査により実施された。
 
中小企業経営者は、人口減少・流出など構造的な人手不足に加え、賃上げに伴う労務費増、円安等を背景としたコストアップ等の急激な環境変化に直面しており、国はこれら課題を克服するため、生産性向上への省力化支援を推進し、さらに、経営の質向上の必要性から「経済財政運営と改革の基本方針2024」に「リスキリングの対象に経営者を追加し、2029年までに約5,000人の経営者等の能力構築に取り組む」ことを盛り込んでいる。
 
経営者の学び直しは、経営力や生産性向上、従業員の学び直し(人材育成)の後押しなどに繋がることが期待されているが、経営資源に限りのある中小企業経営者は、現場の業務を兼務するなど多くの役割を担い、多忙な状況なため、自身の学びは後回しにしてしまう傾向にあることが想定されている。
 
今回のアンケートでは、(1)中小企業経営者の学び直しの状況の把握、(2)経営者自身の学びへの姿勢と、①企業の成長・挑戦、②従業員の学び直しへの支援の2点の関連性を確認し、経営者の学び直しが、経営力の向上や生産性向上、人材育成方針にどんな影響を与えているかを分析したものである。
 
調査結果のポイントは、学び直しの実施状況、学び直しのきっかけと内容、学び直しの課題、学び直しの効果に分けて記載されている。
 
学び直しの実施状況では、経営者の学び直しの実施状況について、学び直しに「取り組んでいる」企業が50%、「取り組んでいないが2~3年以内に取り組みたい」が20%、「過去取り組んでいたが、現在は取り組んでいない」が8%、「取り組んでおらず、取り組む予定もない」が22%の順となっていた。現在または将来的に学び直しに取り組む経営者が合計7割に達しており、回答した経営者の学習意欲の高さが目立っている。
 
学び直しきっかけと内容では、「事業を進める上で不足している知識やスキルを習得したかったから」が最多で80%、「新しい分野の知識やスキルに興味があったから」が56%。外部からの働きかけではなく、自らの課題意識を理由とする回答が多くなっていた。
 
経営者の学び直しの内容は、事業成長に直結する実践的知識(既存事業・新規事業で必要な知識・スキル、デジタル、法務会計)が多く、個人的興味や語学等の汎用的スキルの学び直しは少数となっていた。
 
学び直しの課題としては、現在取り組んでいる経営者、取り組んでいない経営者のいずれも時間的な制約を挙げる回答が最も多く、忙しい経営者の仕事と学びの両立の困難がうかがえるものとなった。
 
学び直しの効果としては、経営者が学び直しに取り組む企業は、新規事業に積極的で利益はやや上昇傾向であり、従業員の学び直しの機会提供や支援に積極的であることがわかった。
 
(参考)「経営者の学び直しに関するアンケート調査」結果

https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1207097